ジェンダー・ギャップ指数

ジェンダー・ギャップ指数とは、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2006年から毎年発表している、各国の男女格差を示す指数(Gender Gap Index︰GGI)をいい、男女平等格差指数とも言われています。WEFは世界のリーダーが世界情勢の改善に取り組む国際機関で、1971年にスイスで非営利財団として設立されました。
ジェンダー・ギャップ指数は次の4分野14項目で国際機関が発表するデータを基に、男女格差の度合いを指数化し、各国の順位を決めています。
- 経済活動の参加と機会(給与、雇用数、管理職や専門職での雇用における男女格差)
- 教育(初等教育や高等・専門教育への就学における男女格差)
- 健康と寿命(出生時の性別比、平均寿命の男女差)
- 政治への関与(議会や閣僚など意思決定機関への参画、過去50年間の国家元首の在任年数における男女差)
日本のジェンダー・ギャップ指数は先進国・東アジア地域で最も低い水準
【2025年】ジェンダーギャップ指数は118位と横ばい(ジェンダー平等スコア0.3%改善)
World Economic Forumの「Global Gender Gap Report 2025」によると、148か国中 118位、 ジェンダー平等スコア 66.6%(+0.3ポイント)でした。日本の順位は昨年と横ばいでしたが、ジェンダー平等スコアがわずかに改善した主な要因は、経済分野における女性の参画状況のスコアの向上によるものです。特に、女性の労働力参加率や管理職への登用、推定所得の格差が縮小したことが寄与しています。
一方で、政治分野では女性閣僚の割合が大きく減少したことから、スコアが前年より後退しました。さらに、日本はこれまでに女性の首相を輩出しておらず、この点もスコアに影響しています。
健康分野においては、出産時の医療従事者の関与率や妊産婦死亡率といった、母体の安全性に関する指標では世界トップレベルの水準を維持しています。一方で、中絶や避妊の選択に関する法的・社会的な制約が存在しており、女性の生殖に関する自己決定権(リプロダクティブ・オートノミー)が十分に保障されていないとの指摘もあります。
教育分野では、識字率や初等教育の就学率は男女ともに高水準ですが、高等教育や博士号取得に関する男女の就学状況の均衡については「n.a.(該当データなし)」とされており、実態を把握することが困難です。
「Global Gender Gap Report 2025」での日本のジェンダー平等に関する記述
日本:前年と同じ118位を維持
日本は2024年版と同じ順位(118位)を維持しつつ、総合的なジェンダー平等スコアは昨年よりわずかに改善し、66.6%(+0.3ポイント)となりました。これは、2015年に記録した過去最高スコア(67%)に近づいており、今後の上昇も期待されます。
ほぼすべてのサブ指標において、日本は2024年から平等(格差の縮小)へと改善しています。
特に顕著な進展が見られたのは「経済参画と機会」分野で、スコアは56.8%から61.3%へと大きく上昇しました。
この改善は、以下のような要因によって支えられています。
女性の労働力参加率の上昇(54.8% → 55.6%)女性の上級職(管理職・立法関係職)での割合の増加(14.6% → 16.1%)
推定所得における男女格差の縮小(59.2%、前年は58.3%)
出典:World Economic Forum「Global Gender Gap Report 2025」
一方、「教育達成度」分野では、ほぼ横ばいの結果となりました。高等教育(大学等)への進学率におけるパリティは若干向上し、女性の進学率も増加していますが、依然として格差は完全には解消されていません。
「健康と生存」分野では、指標の値は更新されたものの、平等比率は維持され、大きな変化はありませんでした。
日本が後退したのは「政治的エンパワーメント」分野で、2024年の11.8%から2025年は8.5%へと低下しています。この後退の主因は、女性閣僚比率の減少(25% → 10%)であり、2024年に記録した政治分野での過去最高スコアから、以前の低い水準に戻ってしまいました。
https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2025/
※本ページのデータは、World Economic Forumが発行する『Global Gender Gap Report 2025』に基づきますが、一部はAI翻訳を用いて日本語に翻訳しています。正確な内容については英語原文をご確認ください。
【2024年】ジェンダーギャップ指数は118位(ジェンダー平等スコア66.3%)

2024年のレポートによると、日本は146か国中118位でした。
昨年よりも7ランクほど順位を上げましたが、先進国では最下位。かつ、東アジア・環太平洋地域においても最低レベルとなりました。特に、「経済活動の参加と機会」と「政治への関与」におけるスコアの低さが、全体の順位に影響しています。
「経済活動」は男女の賃金格差、「政治」は女性議員の少なさが課題
日本の順位 | |
経済活動の参加と機会 | 120位 |
教育 | 72位 |
健康と寿命 | 58位 |
政治への関与 | 113位 |
【2024年レポート】各分野における日本の順位
「経済活動の参加と機会」における日本の順位は120位。問題点として、日本における管理職や経営層への女性登用の低さと並び、男女間の賃金格差や雇用形態の違いです。レポートによると、パートタイムで働く女性の数は男性の約2倍であり、日本女性の平均収入は男性の収入より低い点が指摘されています。
「政治への関与」における順位は113位で、昨年よりやや改善しました。これは女性閣僚数が増えたことが原因ですが、以前として、国会議員に占める女性の割合や閣僚に占める女性の割合の伸び悩み、過去の国家元首に女性がいない点が大きくスコアを落としています。
日本のジェンダーギャップ指数の推移
ジェンダーギャップ指数の公表がはじまった2006年時点で、日本は80位でしたが、そこから毎年日本のジェンダーギャップ指数は低下しています。
低下している原因は、日本以上に他国がジェンダー平等に舵を切り、施策を展開しているためです。「(ジェンダー平等に向けて)何もしない」「自ら変化しない」ことが順位に反映されているとも言えます。
年度 | 日本の順位 |
---|---|
2025年 | 118位 |
2024年 | 118位 |
2023年 | 125位 |
2022年 | 116位 |
2021年 | 120位 |
2020年 | 121位 |
2018年 | 110位 |
2017年 | 114位 |
2016年 | 111位 |
2015年 | 101位 |
2014年 | 104位 |
2013年 | 105位 |
2012年 | 101位 |
2011年 | 98位 |
2010年 | 94位 |
2009年 | 101位 |
2008年 | 98位 |
2007年 | 91位 |
2006年 | 80位 |
(備考)調査年と公表年に差異がある年度がある為、レポートの公表年は非連続。
男女格差を表すその他の指標
ジェンダー不平等指数(Gender Inequality Index:GII)
男女格差を表すその他の指標としては、国連開発計画が発表するジェンダー不平等指数(Gender Inequality Index:GII)があります。この指標は「保健分野」「エンパワーメント」「労働市場」の3分野で各国の順位を決定するもので、2024年のジェンダー不平等指数によると、日本は193か国中22位となっています(2024年3月13日発表)。
ジェンダーギャップ指数(GGI)とジェンダー不平等指数(GII)の違い
ジェンダーギャップ指数(GGI) | ジェンダー不平等指数(GII) | |
---|---|---|
調査(発表)機関 | 世界経済フォーラム | 国連開発計画 |
調査目的 | 男性に対する女性の割合の差異を計測する。ジェンダーの平等に従って国をランク付けする。4分野からなる。 | 国家の人間開発の達成が男女の不平等によってどの程度妨げられているかを明らかにするための指標。女性のエンパワーメントが特徴で、3分野5指標からなる。 |
調査分野 | 【経済活動への参加と機会】 ・労働力率 ・同一労働における賃金差 ・推定所得 ・管理職、役員比率 ・専門職および技術職における男女差(日本にはデータなし) 【教育到達度】 ・識字率 ・初等教育への就学率 ・中等教育への入学 ・高等教育への入学 【健康】 ・出生時の男女比 ・健康寿命 【政治への関与】 ・女性の国会議員 ・女性の閣僚 ・女性/男性国家元首の在任年数 | 【リプロダクティブ・ヘルス】 ・妊産婦死亡率 ・思春期出生率 【エンパワメント】 ・国会議員女性割合 ・中等教育以上の教育を受けた人の割合 【労働市場】 ・労働参加率(男女別) |
開発レベルとの関連付け | なし | あり |
ジェンダー不平等指数は、国の発展度合い(開発レベル)が加味された指標(妊産婦死亡率や中等教育の進学率など)が含まれているため、保健衛生や初等教育が整備された先進国が高めに出やすい特徴があります。よって、ジェンダー不平等指数においては、ジェンダー・ギャップ指数がよりも日本は高い順位となっています。
参考文献、HP
■内閣府男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」(確認日:2024年7月16日)
■世界経済フォーラム『Global Gender Gap Report 2021』
■内閣府男女共同参画局総務課『世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2021」を公表』
■治部れんげ『「男女格差後進国」の衝撃』小学館新書、2020年