対談

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パシフィックコンサルタンツ株式会社のダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)を牽引しているのは、D&I推進室長の飯島玲子さんです。2013年、ダイバーシティ推進室(現・D&I推進室)の立ち上げと同時に室長に就任した飯島さんは、D&Iに関する様々な情報収集を行いました。そのなかで荒金の著書「多様性を活かすダイバーシティ経営-基礎編」と出会い、すぐに相談に来社され、それ以来クオリアと連携しながら、自社のD&I推進に取り組んできました。その後の活動はめざましく、ほっそりした姿からは想像できない行動力と巻き込み力で、多くの施策を実現。その原動力はどこにあるのか、飯島さんの4年間の取り組み実現への想いを語って頂きました。


左:パシフィックコンサルタンツ株式会社D&I推進室長 兼 PCIGグループ経営企画部企画室 飯島玲子様
右:株式会社クオリア 代表取締役 荒金雅子


D&I推進の源泉は、柔軟、自由闊達、任せる風土

荒金:初めて弊社にお越し頂いたのは2014年の春でしたね。D&I担当者になったばかりということでしたが、すぐに弊社にお越し頂き、3ヶ月後には大規模なフォーラムを実現されました。その行動力はどこから来るのでしょうか。

飯島さん:当社では2010年からワークライフバランス推進に力を入れてきました。3年間取り組んだ結果、「残業は美徳」から「残業は会社のリスク」という意識に大きく変化しました。それをベースに次はD&I推進、となったわけです。外国資本が入って設立された会社だったためか、元々上下関係をあまり感じさせない非常に風通しのよい雰囲気があります。D&Iも、そのような流れの中でスタートしましたので、どちらかというと受け入れられやすかったと思います。

荒金:確かに、オープンな雰囲気というのは、最初に登壇させて頂いたフォーラムから感じていました。女性がみな非常に元気がよく活発な議論をしていましたね。またその後の懇親会では上司や役員の方達とも非常にフレンドリーでいい関係なんだなということを感じました。

飯島さん:建設コンサルタントというと、堅い業界と思われそうですが、当社では設立当初から社長も含め、全員「さん」づけで呼び合っています。また、プロとして一人前の技術者になりたいと入社する者が多く、周囲も育てようという意識がある。仕事をおもしろがってする雰囲気があるので、出る杭は打たない、どんどんやらせてみるという社風です。私自身も勢いよく進めすぎてしまって、よく 「誰か止めてくれ~」と思うこともあります(笑)。新しいことにチャレンジしやすい職場ですね。一言で言うと、「自由闊達、柔軟性、任せる」といったところでしょうか。

荒金:まさにD&Iを実践する組織に不可欠な要素です。すでにそのような土壌があるということは、D&Iを推進する上でとても重要ですね。

飯島さん:はい、それをトップや社員が理解していることが大事だと思います。自分たちの強みを組織全体としてわかっていると推進しやすくなります。



トップダウンとボトムアップの両輪で推進中


荒金:D&I推進も今年で5年目に入りますが、どのようなことに取り組んでこられましたか。

飯島さん:D&Iについてはほとんど知識がなかったので、クオリアさんの力も借りながら2年目に「D&I推進方針」という羅針盤を作成しました。その方針に沿って施策を実践してきましたが、掲げた施策のほとんどを実現することができました。最近は、さらにその先をやれるよね、と いう雰囲気になっています。

荒金:方針を作っても、「絵にかいた餅」で終わる企業も少なくないなか、着実に実現されるところは素晴らしいですね。順調に進んできた理由はなんでしょうか。



飯島さん:順調かどうかわかりませんが、推進にあたっては、トップダウンとボトムアップを意識しました。経営層へのインプットとしては、クオリアさんにお願いして役員向けのワークショップや成果報告会を実施したり、役員をメンバーとしたプロジェクトチームをつくり実践にコミットしてもらいました。トップ層が、「自分たちがD&Iを語らないとだめだ」という意識を持ってくれたことが大きいですね。私もトップ層一人ひとりと対話を重ねたり、現場と直接話してもらう機会を作ったりし続けました。そうすると、徐々に自身の経験を重ね合わせてD&Iを語るようになってくれたんです。現場ヒアリングで、時間が足りなくなるほどトップ層が語り始めたときは本当に嬉しかったですね。
また、ボトムアップでいうと、全国15組織にワーキンググループをつくり、テーマを決めて一定期間取り組んでもらい、その成果発表会を行いました。現在2期目が終了しましたが、延べ280名が参加しました。働きやすい職場づくりや生産性を高めるなどのテーマが多かったです。それまで、ほかの人の課題や他部署にあまり関わってこなかった人たちが、お互いに関心をもって対話をする大切さに気付いてくれたことも、大きな収穫だったと思います。
このほか、施策がほぼ実現できたのは、本社で実際に制度を作って運営する関係部署と二人三脚で取り組めたからです。「しつこくてすみません」と謝りながらも、どうにかして一緒に進める方法を模索しました。もちろん、ロードマップどおりにできなかった施策もありますが、次の方針見直しのときにどうするか考えます。

荒金:先ほどの社長のお話でも、D&Iの成果を数字だけで見ていくのは非常に難しいことがわかります。むしろ、職場の雰囲気とか小さな関係性の変化に現れるような気がしますね。そういう意味で、D&Iは空気のようなものかもしれません。空気がある(D&Iが浸透している)状態は、当たり前すぎてその大切さに気付かない。空気が薄く(D&Iがない状態)なってはじめて息苦しくなる。高山病のようなものですね。ただ、D&Iが全くない(常に酸素が薄い)状態が続くと、だんだん慣れてしまってなんとも思わなくなる。
D&Iに取り組むと、呼吸しやすくなって最近なんだか楽になったな~と。(笑)
今まで息苦しさの中で仕事をしてきたことに気づくんですね。

飯島さん:おっしゃる通りです。


笑顔の社員とそれを支えるマネージャーを増やしたい


荒金:ここまで順調に進んできたように見えますが、これからめざすことはなんでしょうか。

飯島さん:決して順風満帆ということではありませんでしたが、室設置から4年目にダイバーシティ経営企業100選に入るという目標を達成できてうれしく思っています。
今、大事にしたいのは、「現場に任せる」ことと「一人ひとりの笑顔」を大切にすることです。
D&I推進を「現場に任せる」といいながら、どうしても口を出してしまうこともあり、兼ね合いが難しいんです。やりやすい部署、やりやすい人達から進んでいくので、全社に浸透させるにはまだまだいろいろな仕掛けが必要だと思っています。
また、当社の特徴なのかコミュニケーション方法がやや淡泊なところがあります。雑談が苦手な人が多いようなんです。昼食時に隣り合って座っている10人ほどが「全員黙々とPCを見ながらお弁当を食べてる図」はあんまり楽しく見えないですよね(笑)。飲みニケーションやたばこ部屋ではない、気楽に話をする場や機会を増やしていきたいと思っています。各部署では定期的に工程会議をしているんですが、そういった場ももっと活用できるかもしれません。

荒金:「肯定会議」?いいですね~。

飯島さん:いえいえ、「工程会議」です。仕事の進捗や情報を共有する場ですが、ほめあうことはあまりないですね(笑)

荒金:あ、そうでしたか。でもたまにみんなでほめあう「肯定会議」もいいんじゃないですか。「あ、それいいね~」から始まる会議(笑)

飯島さん:はい、本当にそういう場が必要だと思っています。3年後もこの仕事をしているかわかりませんが、もっと社員の喜ぶ顔を増やしたいですね。

「この人のために何をすれば笑顔になるんだろう。そのために自分は何ができるんだろう。」そう考えるマネージャーを増やしたいし、そういう人が育つような仕掛けを熱い気持ちで提案していくのが私のミッションだと思っています。

荒金:御社の取り組みにはD&I経営の本質を見た気がします。
D&I経営に対するトップ層の強い意志。現場で実践的に取り組む社員たち。それを支える仕組みや制度。そしてなによりも飯島さんのようなゆるぎない信念と行動力をもった担当者の存在こそが、強力な原動力になっていると感じました。D&Iという言葉は非常に抽象的ですが、その本質は、一人ひとりの社員の笑顔を増やし、それが会社の活力や成長につながることです。今後も御社のD&I推進から目が離せませんね。引き続き、ご支援させていただけることを大変うれしく思います。
本日は素晴らしいお話、本当にありがとうございました。


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パシフィックコンサルタンツ株式会社 代表取締役社長高木茂知様、同社 D&I推進室長の飯島玲子様との対談はこれで終了です。
次回はどんな方と出会い、お話を伺えるのでしょうか。皆様もどうぞ楽しみにお待ち下さいませ!