【対談】この人と語る!多様性の未来

 今回のお相手は、豊通保険パートナーズ株式会社常務執行役員 川口眞吾様です。グローバルにビジネスを展開する豊田通商グループの保険代理店およびカスタマーサポート部門を統合し、2013年に設立された「豊通保険パートナーズ(TIP)」様は、現在全国9拠点で約500名弱(派遣を含む)の社員が働く企業です。コンタクトセンターを配下にもつ同社では、グループ本体である“商社”にくらべ、女性社員比率が圧倒的に高く、女性活躍推進は大きなテーマでした。

 クオリアは長年、メンタリングプログラムや女性リーダー育成研修などを通して豊田通商様とおつきいがありました。そのご縁で2017年から豊通保険パートナーズ様の女性社員のリーダーシップ開発を目的とした「MIRAI塾」を支援しています。「MIRAI塾」プロジェクトの取り組みプロセスにおいて、女性社員の自己尊重感を高める要素を重視した研修や、その後の8週間オンライントレーニング「アクションフォー(旧 Diチャレ!)」プログラムが、どのような効果を発揮したか、川口様に伺いました。


左:豊通保険パートナーズ株式会社 
  人事総務部・コンプライアンス推進室担当 常務執行役員 川口眞吾様
右:株式会社クオリア 代表取締役 荒金雅子


<MIRAI塾に取り組むようになった経緯とは>


荒金:豊通保険パートナーズ(以下TIP)では、2017年から女性社員の意識醸成と行動変容を促進するプログラム「MIRAI塾」でご支援させて頂き、今回で第2期を迎えました。そもそも、女性社員のリーダーシップ開発に取り組もうとされた、きっかけはなんだったのでしょうか。

川口さん:豊田通商で最初に人事の仕事に関わったのは今から21年前です。当時、女性社員の一般職から総合職への職種転換に着手しました。一般職にきちんと実力をつけさせてから転換を進めよう、と考えていましたが、なかなかうまくいかずこれまでのやり方を変える難しさを実感しました。

また、同時期に新卒女性の採用も開始しましたが、当時典型的男性社会であった商社の中で、男性並みの働き方を女性に求めてしまい、うまくいきませんでした。そのような経験から「表面的なものでなく本質を見極める。会社も変わっていかなければならない」ということに気づき、制度や仕組みを変えるきっかけとなりました。女性のリーダーシップ開発に必要なことは、男性と同じようなやり方を求めるのではなく、女性のもつしなやかさや個人の能力、個性を活かすことです。第2期では特に、リーダーシップ開発という言葉を使わず、「まず意思をもって自らをリードする存在になる」ということに重点をおきました。


<第2期を開催するにあたっての想いとねらい>


荒金:2017年「MIRAI塾」第1期では、参加した女性達が非常に意欲的、行動的になり、大きな成果があったと感じていますが、第2期においてはプログラムを一部変更しました。どのような思いやねらいがあったのでしょうか。

川口さん:第2期の女性の中には、まだリーダーになることへの心の準備が十分できていない者も多い、と感じていました。そこで、まずは自信をもって一歩前に出ることを重視させるよう意識しました。また、1期生と2期生の交流の場を設けたり、上司研修を取り入れることによって、職場での関係の質が高まり、より受講生の意識変容につながれば、と考えました。


女性活躍推進研修プログラム表

サービス名称は、インタビュー当時のDiチャレ!を使用


荒金:1期・2期生の交流は大変効果的でした。1期生はこれまでの振り返りを行うことができ、また後輩に対して責任感や育成意識も生まれたようで、非常に良い場だったと思います。

川口さん:はい、そうですね。 2期生も、1期生の様子を通して、自分がこれからこういう風に変わっていくのだ、とイメージがつきやすかったと思います。社内のネットワーキングを深める良い場だったと思います。

荒金:今回新たに、上司向けの研修を組み込んだことも、よい成果につながった要因だと思っています。女性社員がキャリアを考える上で、直属の上司の支援はとても重要です。女性だけに研修をして「さあ、研修をしたのだから自力で頑張れ」と言われても、職場に戻ると相変わらず上司の関わりが薄い、となると研修効果も半減してしまうものです。

川口さん:チームの自立はその組織の長であるチームリーダーがキーとなります。組織風土というものは半径3mの空間で創り出されるものです。現場の長としてしっかりと組織をまとめあげ、最大限の結果をだしていくのが重要な役割ですし、新しい仕事のスタイルを現場で取り入れてもらうためにも、その要となるグループリーダーに対する研修は非常に大切です。


<8週間オンライントレーニングアクションフォーの活用方法と効果>

荒金:「MIRAI塾」では継続的なトレーニングとして、オンライン上でのコミュニケーションツール「アクションフォー」を採用していただきました。グループメンバー同士が目標達成を日々報告し、Habiボタンを押したり、スタンプを送りあったり。途中2回のテレビ会議とリアル会議のハイブリッドによるミーティングを行い、お互いの成長を確かめあいました。これまでにない、研修のフォローアッププログラムとして、他社でも好評を頂いているツールです。日常的にコメントを交わすことで、仕事に流されがちな日々を意識的に過ごせたのではないでしょうか。



川口さん:短期間の研修では、大きな変化はおこりにくいものですが、オンラインのフォローの仕組みがあることで意識や行動を維持できたことは大きな意味があると思います。それが最終回の発表の場につながったと考えます。


アクションフォーの詳細はこちらから

<研修終了後の実践における変化と成果>

成果報告会での成果

荒金: MIRAI塾を終えての気づきや、変化をお聞かせください。

川口さん: 受講生たちに、リーダーシップを発揮しろと無理強いをするのではなく、研修の場や仕事を通して背中を押し続ける。背中を押されて一歩前に踏み出し小さな経験を積む。その繰り返しの中で「あ、なんだ、自分でもできるんだ」と、自信につながり、モチベーションがあがる。結果として、大きな変化につながった。大成功だったと思います。

荒金: 最終日の報告会では、直属の上司や経営層へ向けて、個人目標・チーム目標を発表しました。研修当初は、控えめで自分を過小評価するメンバーもいましたが、報告会では驚くほど変化していました。しっかりと意見を主張し自分の言葉で話す人が多く、自信を持ち大きく成長した様子が感じられ、思わず涙腺が緩んでしまいました。

川口さん: 研修当初と、終了時の変化には目を見張りましたが、なによりも、楽しみながら研修に取り組んでくれたことが嬉しかったですね。当初は、義務感・責任感で受講していたかもしれませんが、後半になると、忙しさの中でも、楽しみながら積極的に取り組んでいたように感じます。

荒金: 報告会まで本当に時間がなく、大変だったと思います。けれど短い期間で素晴らしいプレゼン資料を仕上げ、堂々と発表する姿には本当に感動しました。また、荒木社長が最初と最後に直接メッセージを下さったり、懇親会にも参加下さったことは、それだけ重要視されている証しでもあり、大きな励みになったと思います。

特に印象に残っているのは報告会での社長の言葉です。
「会場に入ってすぐに、皆さんの成長を感じました。初日はとても緊張していて不安そうな表情をしていた印象があります。でも今日は違う。入ってきた私を見て皆さん、にこっとしました。しっかり前を向いて私の目を見つめ返しています。それだけで皆さんが大きく成長したことを実感し、とてもうれしいです」
その言葉に、女性達一人一人をしっかり見守ってくれているのだなあ、と感銘を受けました。また、彼女たちの力を信じてサポートしている人事部の皆さんの支援があってこその、今回の成果だと思います。

川口さん: さらに報告会の最後に上司部下の面談時間も設けたことによって、普段話せないことをざっくばらんに話せたのではないでしょうか。業務的な会話や雑談ではなく、キャリアについての話し合いの場となったのは良かったと思います。このような会話の機会はめったにないので、本当に良かったと思います。

研修終了後のメンバー、上司、組織の変化

荒金: 一時の盛り上がりだけでなく、終了後も続く仕掛け、仕組みづくりは必要ですね。後日、上司の変化はありましたか?

川口さん: 研修では多少の変化が感じられたものの、研修後にそれを定着させるための仕組みはまだまだこれからです。上司には、D&Iの取り組みを含めて、総合的にバランス感覚をもってマネジメントすることを期待しています。

<取り組みによって見えた、未来の可能性>

荒金:D&Iの潮流を見ますと、「組織内のD&Iをどうするか」ということだけではなく、「社会の一員として、企業がD&Iに取り組む意義」を考えることが重要になると考えています。
最近では、企業のCMや発信がネットで批判を浴び炎上するケースが後を絶ちません。ダイバーシティや女性活躍に鈍感であることは大きなリスクになる時代でもあります。

女性活躍推進をする上で大切な3つのステップがあります。最初は「Women support of women」、2つ目が「people support of women」、そして「people support of people」です。まず女性同士のネットワークを強化し、その後組織全体で女性活躍を後押しする、最後は性別に関係なく、お互いが支えあいながら活躍する組織づくりを示唆しています。

それにはD&Iを女性活躍のみにとどめず、また一過性で終わらせないことが大切です。今後御社ではどのような取り組みを進めていく予定でしょうか。



川口さん: おっしゃる通り、D&Iというと、女性のみがクローズアップされがちですが、それだけではないのは当然です。

今、重要だと考えているのは、固定観念を変えることです。私自身も若い頃は「残業するのは当たり前」と毎日深夜まで働いていました。残業を良しとするバイアスが、自分の中にもまだあるんですよね。TIPは業務自体の歴史が古く、考え方もそれを受け継いでいる部分が多い。昔からのイメージをもったまま物事を考えてしまうと新しい時代に対応できません。全く逆の発想によって会社が成長する姿――まだイメージはつかないのですが、そのくらいの視点から物事を考える必要があると思っています。すぐにできることはすぐにやる。大きな打ち手は1年で何回も打てないので、重要度をみて、1つ1つ丁寧に確実に実施したいと考えています。

荒金:「固定観念を変える」。まさに、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の打破ですね。過去の常識、当たり前にとらわれず柔軟な思考と発想をもって取り組むことはとても重要です。

川口さん: 女性の意識を変えるには、まずは「変化に慣れるための仕掛け」が必要だと思っています。変化を受け入れ続けると習慣になる、そのプロセスが大切なんですね。変化を楽しむことができる心の準備が出来ていると、早く順応し、当初のイヤイヤ期間を「もっとこんなことができた」と思えるようになると思います。経験上、当初は批判のあった改革も、3年経つと慣れてきます。極端な話、3年もかけているようでは勿体ない。

変化に対応していくためには、「やる・やらない」の前に「必要か・必要でないか」を腹落ちさせることが大きなカギだと思っています。同時に、現状に甘んじないように仕事にローテーションをかけていく。今までやってきた事を卒業して後輩に引き継ぎ、新しい仕事にチャレンジする、という環境を与えることで、学び続ける人材となればよいと考えています。
次は第3期目ですね。引き続きよろしくお願いします。

荒金:御社のMIRAI塾は、私の中でも力を注いだプロジェクトの一つです。当初は、なかなかエンジンのかからない女性の皆さんの姿勢に、0を1にもっていく大変さを感じました。けれど、たった4ヶ月の研修で、それぞれが素晴らしく成長しました。彼女たちの積み重ねた日々の小さな行動が、大きな変化を生み出したのだと感じています。そして、「MIRAI塾」での学びを、今後職場の中で広めて下さればと願っています。第3期の女性社員のみなさんにも、圧倒的な変化・成果が生まれるような、MIRAI塾にしていくことをお約束いたします。
本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。



左:豊通保険パートナーズ株式会社 
  人事総務部・コンプライアンス推進室担当 常務執行役員 川口眞吾様
右:株式会社クオリア 代表取締役 荒金雅子


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