働き方改革とダイバーシティに関する用語集

ワールド・カフェは米国組織開発学者のアニータ・ブラウンとデビッド・アイザックスご夫妻が1995年にサンフランシスコ郊外の自宅で開催したワークショップの中で偶然発見されたものです。ワールド・カフェは、コーヒーブレイクの時間がもたらす「カフェ」のようなリラックスした環境での会話を、会議そのものの運営に活かそうとする発想から生まれたものです。
ワールド・カフェのプロセスは、「人間は会話する生き物である」との信念に基づいて設計されており、人間の能力を十分に発揮させることのできる様々な特徴を備えています。

ワールド・カフェでは、参加者を無理矢理に参加させたり、コントールすることはありません。ワールド・カフェで話しあっていると、突然のひらめきが思い浮かび、それに基づいてアイデアや知恵が生み出されていきます。参加者の主体性が引き出されるので、共創が起こり、一体となる場が形成されて相乗効果をもたらします。

一般的なワールド・カフェは、2~3時間かけて行います。1ラウンドを20分~30分かけて3回ラウンド行い、最後にハーベストと呼ばれる全体共有の時間を30分程度とります。各テーブルには「カフェホスト」が残り、ほかのメンバーは他のテーブルを渡り歩くことにより短い時間で多くの人と対話することが可能となります。また模造紙に落書きをしたり、お菓子をつまみながら対話することでカフェにいるようなリラックスした雰囲気を味わうことができます。

やり方は非常にシンプルですが、その一つひとつにしっかりとした哲学と理念が組み込まれています。自分の意見を否定されずお互いを尊重した中で交わされるこの手法は、創発や協働創造を生みだす画期的な方法として、瞬く間に世界各地に広まっていきました。日本でも2007年に「ワールド・カフェ〜カフェ的会話が未来を創る〜」の日本語訳が発刊されたことをきっかけにして幅広い分野で活用されるようになりました。今ではビジネスの現場は勿論のこと、自治体や地域コミュニティ、小中学校、大学、医療機関、NPOなど様々な分野で広く活用されています。2015年にはワールド・カフェ創設20周年を記念した大規模なイベントが、東京を中心に9会場をオンラインでつないで開催されました。
ダイバーシティ&インクルージョンの分野でも、多様性を活かす場として、また多様な人々が相互理解を深め協働するきっかけとして活用され、様々な効果を発揮しています。

ワールド・カフェの前提となる基本的な考え方

1.人々の会話がウェッブ状につながり合うことにより未来が創造される

ワールド・カフェのプロセスでは、参加者が4~5人単位でテーブルを囲んで話しあいます。話し合いながらメンバーの組み合わせを変えることにより、参加者の運ぶアイデアが相互につながりあって、新しいアイデアを生み出し(他花受粉)、未来を創造する自己組織化がおこるようにデザインされています。

2.魅力的な問い(大切な問い)が、集合的学習を促進する

ワールド・カフェで重要なことは、どんな「問い」について話しあうかということです。参加者が真に話しあいたいと思っている問いについて話しあうことにより、集合的な学習が起きるのです。

3.人間や組織、家族、コミュニティは生命システムである

組織や人を生命体として捉える見方が広がっています。生命体としてみるときに注目されるのは、自己組織化能力(*1)です。ワールド・カフェにおいても、参加者の自己組織化能力が最大限に発揮できるようにするための様々な工夫がされています。
*1:自己組織化とは・・混沌状態から複雑な構造が自律的に形成されてゆくこと(コトバンクより)

4.生命体システムの基本はネットワークである

生命体が環境変化に適応し、適切な学習と発達を行っているのは、生命体が相互作用のネットワークで構成されているからです。ワールド・カフェは、こうした相互作用のネットワークを実現するプロセスとして設計されています。

5.システムが多様性に富み、創造的な方法で結合されることにより知性(インテリジェンス)が生まれる

参加者の多様性を確保することは大切です。ワールド・カフェでは、多様な考え方が出会い、相互に関連づけられ、新しい気づきや知恵が生まれる場として工夫されています。

6.我々は必要とする知恵や資源を集合的に所有している

ワールド・カフェでは、誰か特定の人が知恵や資源を持っているとは考えません。参加者一人ひとりの持っている知恵や経験を相互に関連づけることにより、一人ひとりの能力を超えた新しい知識や知恵が生まれてくるのだと考えます。

参考資料
■アニータ ブラウン,デイビッド アイザックス「ワールド・カフェ~カフェ的会話が未来を創る~」ヒューマンバリュー,2017年
■ワールド・カフェ20周年記念ハンドブック「ワールド・カフェが開く社会・組織・コミュニティの未来」IAFJapan,2015年